「ハガネのような鋭い切れ味を持ちながら、ステンレスのように錆びにくい」——。堺の伝統工芸士・山塚尚剛が手がける包丁の中でも、特にプロの料理人から絶大な支持を集めるのが「銀三鋼(ぎんさんこう)」です。
扱いやすさが魅力の銀三鋼ですが、適切な手入れと定期的な研ぎを行うことで、その真価(長切れと吸い付くような刃入り)を何年・何十年と保ち続けることができます。本記事では、日々のお手入れ方法から、初めての方でも失敗しない砥石での研ぎ方のコツまで分かりやすく解説します。
1. 銀三鋼の性能を長持ちさせる「日常のお手入れ」
「錆びにくい」銀三鋼ですが、完全に無敵というわけではありません。美しい状態を長く保つための基本動作は次の3点です。
-
使用後はぬるま湯と中性洗剤で洗う
油分や食材の酸をしっかり落とします。食洗機の使用は柄(ハンドル)の割れや刃こぼれの原因となるため必ず手洗いしてください。
-
水分を完全に拭き取る
洗った後は、乾いた布巾で刃先から柄の根元まで水分を拭き取ります。特に柑橘類や塩分の強い食材を切った後は、早めの洗浄が効果的です。
-
風通しの良い場所で保管する
完全に乾燥させてからケースや包丁立てに収めます。長期間使わない場合は、刃物用油を薄く塗っておくと完璧です。
2. 研ぎ始めるタイミングの見極め方
「いつ研げばいいのか分からない」という方は、以下のサインを目安にしてください。
-
トマトの皮に刃が滑り、すっと入らなくなったとき
-
長ネギを切った際、繋がってしまうとき
-
鳥皮などの筋が切りにくくなったとき
銀三鋼は非常に硬度が高く長切れするため、家庭用であれば1〜2ヶ月に1回、プロの現場でも週に1回程度のメンテナンスで十分な切れ味を維持できます。
3. 初心者でも失敗しない!砥石を使った研ぎ方
【準備するもの】
-
中砥石(#1000前後):日常のメンテナンス用
-
仕上げ砥石(#3000〜#6000):より滑らかな切れ味を求める場合
-
濡れ雑巾(砥石の滑り止め用)
【研ぎの手順】
-
砥石に水を含ませる
砥石を水に10〜15分ほど浸し、気泡が出なくなるまでしっかり水を含ませます。
-
角度を固定する(15度=10円玉2枚分)
刃と砥石の間に10円玉2枚が入る隙間(約15度)を保ちます。研いでいる最中にこの角度をブレさせないことが最も重要なポイントです。
-
表刃を研ぐ(「かえり」を出す)
あご(刃の元)から切先(刃先)まで、いくつかのセクションに分けて均一に研ぎ進めます。刃の裏側にザラザラとした「かえり(研ぎかすの引っかかり)」ができるまで研ぎます。
-
裏刃を研ぎ、「かえり」を取る
包丁をひっくり返し、裏面を砥石にベタ当てに近い角度(10円玉1枚分程度)で数回軽く滑らせ、表研ぎで出た「かえり」を取り除きます。
-
仕上げ
水洗いして水分を拭き取り、試し切り(新聞紙やトマト)をして引っかかりなく切れれば完了です。
4. 山塚尚剛の「銀三鋼」が研ぎやすい理由
一般的なステンレス包丁は「粘り」が強く、研いでも刃が付きにくい(かえりが取れにくい)特徴があります。
しかし、山塚尚剛が鍛造する銀三鋼は、熟練の火造りと熱処理によって分子構造が極めて密に整えられています。そのため、「硬いのに砥石のかかりが良く、ハガネと同じ感覚ですっと刃が付く」という、職人仕立てならではの研ぎやすさを体感いただけます。
まとめ:お手入れひとつで「一生モノの名刀」に
銀三鋼は、正しく手入れをし、定期的に砥石をあてることで、プロの過酷な現場でも何十年と連れ添うことができる一生モノの道具となります。
ご自身で研ぐお時間が取れない場合や、大きく刃が欠けてしまった場合は、当ストアでも研ぎ直し・メンテナンスを承っております。ぜひお気軽にご相談ください。
